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開発物語ニの巻:小野 豊一氏(デザイナー/型染作家)~吾亦紅と無量花にこめられた想い~

二の巻:
小野 豊一氏(デザイナー/型染作家)~吾亦紅と無量花にこめられた想い~

大分県国東半島。
海・山・川に囲まれた自然豊かな場所で活動する型染作家・小野豊一さん。
この地に工房とギャラリーを構え、型染めや筒描きといった伝統的な染色技法を用いて、独自の世界観を表現しています。

彼だからこそ生み出すことのできる新しい「型」。
ぬくもりをもった作品たちは、わたしたちの日常に寄り添い、感動を与え、こころに火を灯します。
その圧倒的な存在感に魅せられたイーオクト代表・髙橋百合子は、リネン&シュニールコットンブランケットのデザインを小野さんに依頼、そしてスウェーデンのKLIPPANと日本古来の型染のデザインを掛け合わせた、唯一無二のブランケットが誕生しました。
新しい伝統を次の世代に繋いでいく、小野豊一さんへのインタビューです。


いつか北欧の仕事が出来たら嬉しい、と思っていた

ー KLIPPANのブランケットのデザイン依頼があった時、どのように感じましたか。

「単純に嬉しかったです。
僕が布の模様を考えるようになったのは20代後半あたりからでした。
その頃から北欧のテキスタイルデザインなどをしばしば参考にしていて、いつか北欧の仕事が出来たら嬉しいな、と思っていました。
ですので、今回のお話を頂いた時は、あの頃の妄想が現実になって、びっくりしています。
あの頃は色々あって・・・人生捨てたもんじゃないですね。」


潔さに魅了された「吾亦紅(われもこう)」と、空想の花「無量花(むりょうばな)」

ー 吾亦紅と無量花のデザインは、どのようにして生まれたのでしょうか。


「吾亦紅は不思議な形をした植物です。
細い茎の先に丸い玉がついていて、子どもでも簡単に描けるような形をしています。
そのシンプルな形にただただ惹かれて、この柄を考案しました。
他の植物はもっと複雑な形態をしているので、それらを模様にする時は複雑な形態を簡素化したり変形させたりしながら模様に仕上げていくわけなのですが、吾亦紅は違います。
初めから簡素化され、余計なものが付いておらずもの凄くシンプル。


何か潔さのようなものに魅了されました。
“模様”を本格的に考えるようになったのは20代後半でしょうか。
その時は花や植物にあまり興味がなくチューリップや桜など、誰が見ても分かるような植物の名前しか分かりませんでした。
しかし、何故か花柄には興味があり「描いてみたい」と常日頃から思っていましたので、それなら空想の花を描いてしまえと完成したのが「無量花」です。


無量とは数知れないほどあるということです。
僕のような男でも花に惹かれるところはあって、沢山の花が目の前に広がる憧れが自分を花柄へと突き動かしていったのでしょう。」


アイデアが閃いた時の輝きを失わないように再現する

ー 作品づくりで大切にしていることは何でしょうか。

「仕事の内容などによって大切にしていることは違うのですが、今回のようなテキスタイルデザインや表現の要素が強い仕事については、アイデアが閃いた時の輝きのようなものを失わないように再現することでしょうか。
良い作品というのは往々にして言葉がいらず、共鳴するように伝わるものだと思っています。
その震度や勢いのようなものを殺さないよう、生かすことが重要かと思います。

アイデアを形にする時の初動には気を使います。
頭にあるものを手に握った鉛筆を使って紙に描いていく時、初めの描く線がアイデアから離れたものになってしまうと、雲のようなアイデアはすーっとどこかに流されてしまう。
どれだけ描いてもあの時のアイデアとかけ離れたものになってしまう。
こういうことはよくあります。」


型染めは模様としての図案を作り出す技法でもある

ー 小野さんのデザインがKLIPPANのブランケットとして織り上がった時は、いかがでしたか。

「普段は“染め”で表現している柄が“織り”として表現されて、とても新鮮に映りました。
型染めは模様を染める技法として用いられますが、僕は模様としての図案を作り出す技法でもあると思っています。
ですので、実際に型を使って染めなくても模様としても成立しているこのブランケットを見て、型染めに助けられたと思っています。
もちろん、KLIPPANの素材の素晴らしさがあってこそ!です。」


モノを作るということはどういうことなのか、丁寧に考えていきたい

ー これから挑戦したいことがありましたらお聞かせください。

「今、衣服のデザインに本格的に取り組んでいます。
規模としてはごくごく小さなものですが、時間をかけて良いものを作ろうと頑張っています。
これまでは若気の至りで、作りたい模様を勢いで作ってきたと思います。
その勢いが自分の活動を支えてきたとも思いますが、これからはモノにもっと焦点を当て、模様とモノの関係をじっくり観察して動いていきたいと考えています。
現代社会はモノで溢れています。
モノを作るということはどういうことなのか、自分なりの答えを丁寧に考えていきたいです。」


北欧×日本の面白さを感じてほしい

ー 吾亦紅と無量花のブランケットをお求めになる方へメッセージをお願いします。

「今回のブランケットは、型染めが持つ模様の魅力を含んだ素晴らしいものができたと思っています。
その魅力とは日本を感じさせるものであったり、工芸的な暖かさであったり。
KLIPPANという上質な北欧の素材に、型染めの模様が合わさる面白さを感じて頂けたら幸いです。」



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小野 豊一(おの とよかず)/よつめ染布舎 よつめデザイン
1982年広島生まれ。広島芸術専門学校グラフィックデザイン科卒業。㈱吉田旗店(岐阜県)にて染めの見習いとなり㈲豊栄堂染工場(広島)に勤務。その後、大分に移住、よつめ染布舎を設立。染色からグラフィックデザインまで幅広く活躍中。
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